障害年金を受けることによるデメリットはありますか?

質問

障害年金の申請を検討していますが、申請して受給が決定してもデメリットがあるのであれば先に知っておきたいのですが、デメリットはありますでしょうか?

 

回答

障害年金の申請と受給を躊躇するほどのデメリットは無いと思われますが、下記の点には注意が必要です。

1.寡婦年金又は死亡一時金が、配偶者や遺族に支給されません

寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者(自営業など)として10年以上保険料を納付(免除期間を含む)した夫が死亡した場合、婚姻関係が継続10年以上あり死亡した夫に生計を維持されていた妻が60歳から65歳になるまでの間、受給できる年金制度です(年金額は夫の支払い済みの国民年金保険料をもとに計算された老齢基礎年金額の3/4)。

死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者(自営業など)として36ヶ月以上、国民年金保険料を納付した夫が死亡した場合に、夫に生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母、孫、兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給される一時金です。寡婦年金も受給できる場合はどちらか一方を選択します。

この寡婦年金、死亡一時金は、ともに年金の掛け捨て防止という観点から第1号被保険者の夫が老齢基礎年金や障害基礎年金等を受給したことがないことを条件としているため、上記の2つのケースで夫が障害基礎年金を受給していた場合は、配偶者や遺族に寡婦年金又は死亡一時金は支給されません。障害年金を受給したことで埋め合わせは不要になった、という考え方からです。

2.国民年金保険料の法定免除を申請した場合のみ、老齢基礎年金が減額されます

障害基礎年金ならびに障害厚生年金・障害共済年金の1級または2級以上を受けている方は、国民年金の保険料(月額約16,500円。年度によって若干増減します)が障害認定された日を含む月の前月の保険料から免除となります(要申請)。3級の方や障害手当金の方は該当しません。

免除した期間は半額を支払ったとみなして計算され、将来(通常65歳から)受け取る老齢基礎年金にも半額反映されます。20歳から60歳までの40年間、国民年金保険料を全て払った人は、65歳からは年額約78万円の老齢基礎年金が貰えます。この40年間の全期間を法定免除になった場合、65歳からの老齢基礎年金の金額は半分の約39万円となります。

人工関節や知的障害などの永久認定以外の場合は、障害状態の変化で老後も障害年金を受給できるとは限らないため、法定免除の期間でも年金保険料を納めることで減額は防げます。

配偶者の扶養に入っている方は影響ありませんが、障害年金を受給する前も国民年金第1号被保険者(自営業など)であった方や、障害年金の受給を契機として配偶者の扶養から外れてしまった方(下記3.のケース)は、国民年金の法定免除制度の申請を検討されるべきかと思います。

※法定免除が決定した場合、障害年金の申請完了後の審査を待っていた期間に、すでに納付済の国民年金保険料は返金されることになっています。

将来、老齢年金を受給する可能性があって、満額受給されたいという方は、法定免除を申請せずに、国民年金保険料を支払う必要があります。

3.障害年金を受給することで家族の扶養から外れる場合があります

配偶者の扶養になっている方が、障害年金の金額単独で年額180万円以上になる場合、または障害年金とパート等の他の収入の合計が年額180万円以上となる場合は、配偶者の扶養から外れることになり、健康保険の扶養から外れることになります。(障害年金を受給していない方の場合は年額130万円です。俗にいう「130万円の壁」です)

扶養から外れた場合には、ご自身でお住まいの市町村の国民健康保険に加入することになります。併せて、配偶者の扶養になっていたという方は、国民年金第3号被保険者(国民年金保険料の負担なし)から国民年金第1号被保険者(年金保険料の支払いが必要)となります。(月額約16,500円 年度によって若干増減します)

パート等の他の収入がある場合は注意が必要ですが、障害年金だけで扶養から外れることはほとんどありません。外れるケースとして、「配偶者と複数の18才以下の子供がおり、これまでサラリーマンで高給であった方がうつ病になり、障害厚生年金2級を受給する」という場合は、障害厚生年金部分の金額が高くなり、配偶者や子の加算が付くことから、年金額が180万円を超えることは考えられます。

しかし180万円を超えることが確実で、扶養から外れてしまう方でも、障害年金を受給することによる経済的メリットの方が上回りますので心配はありません。個々の状況により変わりますので計算は省略しますが、扶養から外れて国民健康保険料や国民年金保険料を支払ったとしても、これらの保険料が、受給できる障害年金の金額を上回ることはない為です。

障害年金を受給するメリットは、その受給額や国民年金の法定免除なども含め、扶養から外れるデメリットを上回ります。

4.障害年金の受給と同時に健康保険の傷病手当金を申請する場合のみ、勤務先に知られることがあります

障害年金は非課税であり、また受給している事実は個人情報ですから、年末調整や就職などで会社に申告する必要は全くありません。

知られるケースとして、健康保険の傷病手当金を申請する場合、申請用紙に「障害年金受給中の有無を記載する欄」がある為、勤務先(の人事担当者等)が障害年金の受給を知ることになりますが、このことが会社で問題になることはありませんので、デメリットというほどではないと思います。

※障害年金と傷病手当金は、受給期間が重複するといずれかが返金又は減額となる為、一般的には受給の時期はずらすことが多く、傷病手当金の受給期間が終了する時期の数か月前の段階で障害年金を申請するケースが多いです。その際、上記の傷病手当金の申請用紙に「障害年金を申請中」と記載することになります。

5.受給に負い目を感じる方がいらっしゃる(実際は感じる必要はございません)

障害年金は日本国憲法第25条「生存権、国の生存権保障義務」による生存権の保障としての社会保険立法による社会保障制度としての年金受給権の一つです。

65歳から貰える老齢年金は「老齢」により稼得能力が減損したことに対しての保証、遺族年金は配偶者の死亡により世帯の収入が減少したことに対しての保証であり、障害年金は障害を負ったことにより就労や日常生活に支障が生じていることに対しての保証です。老齢年金や遺族年金の受給に負い目を感じるということは無いと思いますが、障害年金に対しても同じスタンスで構わないのです。

障害年金は、一部の例外(20歳前傷病)を除けば、保険システムによる、在職中の厚生年金保険料や国民年金保険料を支払ったことへの対価であり、これまで保険料を払ってきた方が受給できる正当な権利ですので、負い目を感じる必要は全くないといえます。

 

障害年金のメリット

障害年金のメリットとしては下記が挙げられます。

1.精神的な余裕が生まれる

障害年金はケガや病気が原因で日常生活や就労が困難な方を経済的に支える国の公的制度です。

等級や生計同一関係の親族の人数にもよりますが2か月に1度、前月までの2か月分(月額5~15万円の為、2か月分合計10~30万円程度)が定期的に振り込まれます。(永久認定の場合以外は、次回の更新月まで入金が続きます)

場合によっては、障害認定日に遡って年金受給権を発生させることにより、数年分が一時金として受け取れる場合もあります。遡りの金額は数百万円になることもあり、事例によっては一千万円を超える場合もあります。

毎日の生活費や通院費や薬代を家族に負担してもらっている方は、このことについて少なからず負い目を感じることもあるかもしれません。

年金という安定した定期収入は、気持ちに余裕をもたらします。

これにより金銭に起因する不安やストレスはある程度軽減されるわけですから、特にうつ病などの精神疾患の方は、病状の改善にも繋がるケースもあります。

実際に精神科医の中には、これらの障害年金の効能を見越して、症状の改善につなげる為に障害年金の受給を患者さんに積極的に推奨する先生もいらっしゃいます。

2.働きながらでも受け取れることがある

特に精神疾患分野の障害年金の認定の現場では、仕事の状況は大きな意味合いを持ちます。仕事をしていることで、「日常生活能力への支障は限定的である」と判断され、不支給になるケースがあります。

しかし、障害者雇用や就労支援施設通所中(A型、B型含む)、短時間のパート等、負荷が少なく職場からの理解や援助、配慮ありきで就労していると認められる場合は、障害年金を受給しながら働くことができます。

3.障害年金の使い道は制限が無い

市町村の生活保護は「住宅扶助」や「医療扶助」等、使用用途が決められていますが、障害年金は用途制限がありません。生活費や娯楽遊興費、貯蓄や投資に回すことも問題ありません。

4.福祉サービス利用やカウンセリング等の選択肢が広がる

障害年金を原資として、訪問介護サービスやヘルパー等の福祉・支援サービスの利用や、医師の診察に加えて臨床心理士等による心理カウンセリングを併用することもできますので、生活面や治療の選択肢が広がります。

その他のよくある質問

障害年金を受給していることは、再就職に不利となりますか?

受給中に就職する場合、障害年金を受給していることが不利になることは原則ありません。
そもそも障害年金の受給は個人情報ですので、面接時や入社時に申告する必要はなく、社会保険や年末調整等の手続きの際にも障害年金の受給が職場に知られることもまずありません。
仮に障害年金の受給を就職先に知られても、障害年金は受給要件を満たした方に支給される、法令で認められた制度ですので、その受給が再就職に影響を及ぼすことは基本的にないと思われます。また、障害年金の受給有無を採用や労働条件に影響させる就職先については、コンプライアンスに対する意識が欠如していると言わざるを得ず、就職先と本当に良いのかを再検討する必要があると思います。

障害年金に税金はかかるのでしょうか?

障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金のすべてが非課税です。非課税ですので確定申告も不要です。一方で65歳から貰える老齢年金は、所得税がかかり、特別徴収という形であらかじめ所得税がひかれた金額が通帳に振り込まれます。

障害年金を受給することで、民間の生命保険に影響を及ぼすことはありますか?

生命保険等の加入に際し、通常、現時点および過去5年の健康状態を自己申告することになります。

その際、受給中の障害年金の申請傷病について告知した為に、保険の加入を保険会社から断られるケースはありますが、障害年金を受給していることを理由に断られることはありません。(最近では精神疾患の罹患歴があっても入れる保険もあります。)

一方で、既に生命保険等に加入している方が、加入後に負った傷病やケガが原因で障害年金を受給するようになった場合、これらを理由に契約中の保険が解約されることはありません。生命保険等はあくまで加入時の健康状態や罹患歴が問われるものであり、契約後にこれらに変化が生じ、障害年金を受給する状態になったとしても、保険契約には影響はありません。(更新を必要とする保険の場合、更新のタイミングで契約内容が変わる場合はあります。)

 

障害年金の申請手続きは慎重にお進めください。

社会保険労務士 濱路陽平

社会保険労務士 濱路陽平

 

障害年金申請は、形式上は自身でも行うことができます。

しかし、こちらで記載している時間的リスク・書類不備リスクが伴います。

当事務所にご依頼いただくと着手金0円で上記のリスクを取り去ります。

請求者様やそのご家族が経済的不安状態から解放され、療養に専念する為の最適な方法が当事務所にございます。

 

1.うつ病や双極性障害等、精神疾患で苦しんでいる

2.初めて病院に通った日から1年6月経過している

3.初診日時点で保険料の滞納はほとんどしていなかった。(社会保険加入で働いていた)

4.現在働くことは困難、日常生活も支障が出ている。

 

1~4に当てはまる方のご相談のご予約は

06-6131-5918まで

または下記からお問い合わせください。