【メディア実績】会社の知恵袋2018年2月号に、代表の濱路社会保険労務士が執筆した記事が掲載されました。

【メディア実績】

当事務所代表の濱路が執筆しました記事が、SBI・ビジネスソリューションズ株式会社様発行の「会社の知恵袋 2月号」に掲載されましたのでご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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以下本文

「精神に障がいを持った方を受け入れる職場の体制づくりとは」

2018 年4月1日から、企業に義務付けられている障がいを持った方の法定雇用率が2% から2.2%へ引き上げられます。これに伴い、5万人を超える障がいを持った方が、就労の機会を得ることになりますが、この中心は「精神に障がいを持った方」になることが見込まれます。今回は精神に障がいを持った方を迎え入れる職場側の心がけについて見ていきたいと思います。

1.「障がい」とは何か

ここではまず、「障がい」の種類や分類の仕方について言及していきます。
「障がい」といっても様々な種類や症状、特徴があります。自治体の福祉サービスや法定雇用率制度、雇用納付金・給付金制度、助成金等の支援の対象となる障がいを持った方とは、原則として各種の障害者手帳の交付を受けていることによって判定されます。(障がい年金制度は異なります。)
障害者手帳は3つに分けられており、
・「 身体障がい者手帳(」肢体や内臓機能等身体の障がい)
・「療育手帳」(知的発達の障がい)
・「精神障がい者保健福祉手帳」(精神の障がい)
となっています。

近年は「発達障がい(アスペルガー症候群、自閉症、ADHD)」等、これまで制度が不十分であった障がいへの支援ニーズが高まっており、「障がい」の概念が広がりつつあります。

 

2. 企業は障がいを持った方を雇用する義務がある

平成25年4月の「障害者の雇用の促進に関する法律(障害者雇用促進法)」の改定で、「企業は障がいを持った方を雇用しなければならない」とすることが正式にルール化されました。障がいを持った方の雇用促進を図る為、現在まで事業主に対して「①障害者法定雇用率制度」・「②障害者雇用納付金・調整金制度」が、設けられております。
障害者法定雇用率を達成していない企業から「障害者雇用納付金(不足1人あたり5万円/月)」を徴収する一方、障害者法定雇用率を超えて障がいを持った方を雇用する企業には
「障害者雇用調整金(超過1人あたり2.7万円/月)」が支給される仕組みとなっています。
平成30年4月から各組織で0.2%ずつ上昇しますが、ここ数年の精神に障がいを持った方の求人件数・就職件数の増加具合や、身体・知的の障がいの方の求人数の横ばいの状況を考慮すると、多くの精神に障がいを持った方が、職場で働くことが予想されます。

3. 精神の障がいを持った方を受け入れる職場側の態勢のポイント

精神障がいは具体的な病名として、「統合失調症、気分障がい(うつ病、そううつ病)」等があります。
キャリアを積んできた方も多い為、症状が安定している場合は、職場で力を発揮できる一方、障がいに病気の要素も併せ持つため、症状が安定しない傾向もあります。
こうした精神に障がいを持った方への配慮事項として
①不調のサイクル・サインを把握
②勤務時間等労働条件の配慮
③人間関係作り、コミュニケーションの配慮
が挙げられます。

①不調のサイクル・サインを把握
前述の通り症状が安定しない方も多い為、職場の上司や同僚間で体調や感情の変化を事前に掴むことが、大きなトラブルの予防になります。
「遅刻の増加」、「就業中の居眠り」、「口数の増加(減少)」等がサインの一例として挙げられます。これらの傾向について本人の自覚があれば事前に聴取し、症状のリズムをつかんでおくことで、「業務の負担を減らす」「周囲のコミュニケーションを調整する」等、マネジメントしやすくなります。
②勤務時間等労働条件の配慮
精神的・身体的な本人の負担を考慮し、勤務条件にも調整が必要です。「試用期間中は午前中のみとし、慣れてきたら段階的に伸ばしていく」、「満員電車が負担であれば出勤時間を調整する」、「電話応対は避ける」等、無理がないよう徐々に就業に慣れてもらい、定着に繋げることが大切です。
③人間関係作り、コミュニケーションの配慮
精神に障がいを持った方の平均勤続年数は4年3か月で、離職理由の1位は「職場の雰囲気・人間関係」となっています。(平成25年度障害者雇用実態調査より)
精神に障がいを持った方とのコミュニケーションは、家族や主治医、福祉の専門家にとっても難しいケースがある為、受け入れる職場側が悩むケースが出てくることは当然です。
「会話が通じない」、「話が聞けない」といった声を聞く一方、普段はとても明るく円滑に会話できている方が、いきなり無表情、無頓着になるというケースもあります。
こうした事態に対応するためには、配属先でのキーパーソンの設定が効果的です。キーパーソンとは新人配属時の教育係のようなものです。精神に障がいを持った方の相談や状況のヒアリングはキーパーソンが一本化して行うことで、精神に障がいを持った方の精神の安定や、不適応時の瞬時対応につながります。このキーパーソンを誰に設定するかは重要項目です。配属先の所属長や面倒見の良い方が適任かと思いますが、多忙な方はフォローが遅れる恐れがある為、避けた方が賢明です。また各都道府県の「(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構」が行っている障害者職業生活相談員資格認定講習をキーパーソンが受けておくと、障がいの特性や雇用管理について、基礎的な部分を学ぶことができます。
勿論、キーパーソン一人の負担にならないよう人事部の継続的なバックアップや、外部支援機関との連携も重要です。

 

4. まとめ

日本国内でも障がいを持った方を積極的に雇用し、現場スタッフの教育や顧客サービスの向上、現場指導者の指導力の向上等に繋げ、会社全体の成長に繋げている事例もあります。
(ファーストリテイリング等)
経営のトップが積極的に推進しないとなかなか進まない現状はありますが、国や自治体の制度や支援機関との連携で、以前より進めやすい環境になっていることも事実です。
障がいを持った方の雇用を企業の成長フェーズの一つと捉え、企業(配属先)・雇用された障がいを持った方とその家族の全員が幸せになり、成功事例を増やすことが、今後の障害者雇用率の上昇に繋がると考えております。