■「社会的治癒により初診日が認められ遡及分が受給できたケース」 長岡京市 障害基礎年金1級

 

相談者 女性(60代) / 主婦 / 長岡京市
傷病名 うつ病
決定した年金種類と等級 障害基礎年金2級
その他 #入院中 #主婦 #社会的治癒

症状

ご家族よりご相談頂きました。

ご家族様の方で年金事務所に何回も通い、書類を取り揃えて請求まで行ったようですが、診断書の⑦欄に30年前の精神科通院の記載があり、年金事務所から受付を拒否されたとのことでした。これは受診状況等証明書(平成27年●月●日初診)にも記載されておりませんでした。

現在の入院先に搬送され、過去の病歴を主治医に聞かれた際に、ご家族が答えた30年前の内容が記載されたようです。2つ目の初診である平成27年●月●日までの間に、約30年精神科には通院していない期間がありましたが、年金制度上の初診日は、社会的治癒を主張しなければ、年金事務所が言うように30年前の方となります。

選択肢は

①30年前の初診日を明確にして、要件を満たしていることを証明する。(事後重症請求)

②社会的治癒を主張して平成27年●月●日を初診とする。(遡及が可能)

しかありませんでした。

申請結果

障害年金受給年額:約97円(障害基礎年金1級) 

遡及額:233万

※遡及請求とは
遡及請求とは、初診日から1年6ヶ月経過した日である障害認定日時点に、なんらかの理由で請求されなかった場合に、障害認定日から1年以上経過した後で、障害認定日時点に遡って請求することをいいます。

社労士の意見・感想 

最悪でも選択肢①の方の今後の年金受給権だけは確保しなければならない状況でしたが、書類の状況によっては選択肢②も視野に入れました。一度提出を試みた診断書の内容を見ると、入院中であることを考慮すると2級以上はほぼ間違いないと判断しました。(結果的には当事務所の病歴・就労状況等申立書の効果もあって1級になりました。)

ご家族からヒアリングを行うと、30年前の通院先の病院名を覚えておられた為、カルテの残存を確認しましたが、やはり破棄されておりました。

次に行ったことは、ご本人は当時よりバセドウ病を患っており、うつ病の発症はバセドウ病の発病時期の少し後とのことで、経過観察を含めて30年以上、某大学病院に通院していたとのことでした。こちらに問い合わせを行うと、当然バセドウ病関連のカルテは残っていた為、取り寄せることにしました。

内容を見てみると当然、バセドウ病の治療に関することがほとんどでしたが、たまに同院の精神科に院内紹介していることがわかる記載が数か所ありました。この為、同院の精神科にもカルテ開示を行ってみると、こちらも残っており、取り寄せることができました。ここには、同院の整形外科を受診し始めた頃に精神症状が出始め、主治医に症状を訴えていたことや、最終的には受診が不要になるまでになったことが読み取れました。(整形外科のカルテは残っておらず)

これにより、精神症状の発症時期と初診日は、月単位まで絞り込むことができました。これにより選択肢①での認定はクリアできると考えました。(ちなみに初診日が昭和61年3月以前になると特別障害給付金制度の方の対象となり、請求先は市町村となりますが、これには当てはまりませんでした。)

次に選択肢②の可能性ですが、前述した某大学病院の精神科の通院最終日のカルテには、症状は安定した旨の記載が残っておりましたので(寛解や通院不要の記載は無し)、社会的活動を示す書類が他にあれば社会的治癒主張の余地はあると判断しました。また、バセドウ病のカルテは30年分ありましたので、これらすべてに目を通し、精神症状の記載の有無を確認しました。平成24年頃に「不眠」「心労」の記載が出てくるまでは約24年間は精神症状に関する記載が無いことを確認しましたので、このカルテも社会的治癒の主張には好材料となります。(しかしこの間はすべて国民年金期間)

後はご家族様の方でこの間の本人様の写真や資格証明書、趣味の活動履歴その他参考となる資料をご準備いただき、当事務所で時系列をまとめて、社会的治癒を主張する内容で請求を行いました。

 

 

結果は、審査請求にもつれ込むことなく、一発回答で社会的治癒容認となり、遡及分も認められることになりました。

 

 

手元にある資料をいかに調理して、請求者に有益なように主張していくかは、社労士の知識や腕によりますが、前提として「資料の捜索・提供」や「カルテ開示のご協力」など、ご家族様のご協力が無ければ好結果は生まれないと改めて実感した今回の事例でした。

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