■大阪市 障害年金 うつ病「当時の日記により初診日判明、単身生活であったが2級に認定されたケース」

 

相談者 男性(30代) / 無職 / 大阪市
傷病名 うつ病
決定した年金種類と等級 障害基礎年金2級
その他 #初診日不明 #無就業 #一人暮らし2級

 

症状

平成18年、大学卒業し大学院に進学したが研究がうまくいかず、また研究室の助教授からハラスメント(いわゆるアカハラ)を受けるようになり徐々に自信喪失や無気力感、被害妄想等の症状が出現し大学の保健センターを受診されたようです。

うつ病と診断され薬物精神療法開始。主治医の異動に伴い自宅近くの心療内科に転院。大学院は休学(博士課程延長)した後に単位取得修了となったようです。

治療継続により症状が軽快した為、就職。2年程は公私ともに充実した生活を送っていたようでしたが、毎月80時間以上の残業を必要とする慢性的な過労や、仕事に全力で取り組み過ぎる性格が災いし再発、自宅近くのメンタルクリニックを受診されたようです。仕事は休職期間を経て退職されました。

その後も通院継続するも改善には至らず、日常生活も介護ヘルパーの利用を開始。

今後の療養費や生活費のことを懸念し、障害年金の申請を検討されたようですが、ご自身で初診のカルテ破棄を確認され、その他の書類の収集や作成をご自身で行うのも困難と考え、お問い合わせいただきました。

申請結果

障害年金受給年額:約78 

社労士の意見・感想 

初診の保健センターのカルテは破棄されており、受付簿を根拠とした受診状況等証明書しか取得できませんでした。(初診日付未記載)

2つ目のクリニックでは受診状況等証明書を取得できましたが、月日まで特定できておらず、これらだけでは初診の証明に懸念があった為、第三者証明の依頼を模索しました。

初診の保健センターの主治医の名前を覚えておられたため、ネットで検索するとある病院に在籍されていることがわかりました。さっそく電話で問い合わせ、状況のご説明と第三者証明の説明依頼を行いましたが、当時のことは覚えておられないとのことで断念せざるを得ませんでした。

次に当時の大学院の教授にも同じように依頼しましたが、通院していたことは覚えておられましたが、初診時期までについてはご記憶がない為こ、ちらも断然となりました。

その後、初回の相談時にお渡ししていた当事務所の「初診日手掛かり書類リスト」から、「初診当時の日記」(Web)があると本人様よりご連絡をいただきました。内容拝見すると大学の保健センター受診に至った経緯と日付が記されおり、初診日の重要な手掛かりになると考えました。

結局、その他の初診日を特定する資料はありませんでしたが、

・「20歳~2つ目の心療内科の初診日」の期間のどこを初診日としても保険料の未納は無い(保険料納付要件を満たす)。

・厚生年金ではなく国民年金での請求

の条件がありましたので、初診日は認定される可能性は高いと判断し、初診日の特定作業は終了となりました。

 

次は診断書の依頼と病歴・就労状況等申立書の作成でした。

症状はかなり重く、就労もされておりませんでしたが、単身生活であることが2級認定に影響を与えると判断しました。しかし介護ヘルパーの利用を開始されていた為、この辺りの利用状況や時間数を診断書に記載頂くことが重要と判断し、診断書依頼状に詳細に記載しました。

病歴・就労状況等申立書についても初診日頃の状況や、現在の日常生活におけるヘルパーの活用状況を詳細に記載し添付書類を揃えて請求をかけました。

初診の証明書がない為、審査に時間がかかることが想定されましたが、約2か月半後に年金証書到着のご連絡を頂きました。

 

 

 

初診の証明書が取れない場合、取れる場合と比較すると障害年金の申請においてはかなり時間と手間を要します。(この為、他で断られて当事務所にたどり着くという方もいらっしゃいます。)

初診の証明書が取れない場合でも今回のように条件が揃えば初診日は認められます。(しかし保険料の未納が多いと認定の確率はかなり下がります)

 

また、障害年金における2級の状態像として「日常生活が著しい制限を受ける」があります。

この為、精神疾患では単身生活の場合は2級認定が難しくなっております。

しかし今回のように単身生活ではあっても介護サービスを利用するなど、他者の助けの上で単身生活が成り立っている場合は2級の認定も視野に入ります。

一見、障害年金の受給への障壁が多いと思われる場合でも、一つ一つ紐解いていくと受給に近づいていくケースは多々あります。保険料の未納が多い場合や、転院が多くご自身でも初診のクリニックが思い出せない場合等は困難と判断するケースも有りますが、まずはご相談頂きましたら糸口を見いだせるかと思います。